アウトドアの楽しみとしては、大自然の中で活動をすることが挙げられます。都会の喧騒から離れて自然の中で過ごしていると、気持ちが前向きになっていく方も多いのではないでしょうか。
アウトドアの醍醐味を凝縮した楽しみ方の1つとして、「ブッシュクラフト」と呼ばれる活動が挙げられます。この記事では、ブッシュクラフトの概要や楽しみ方、楽しむうえでの注意点などについて解説します。
ブッシュクラフトとは?

ブッシュクラフトとは、森林や原野などにおいて、できるかぎり自然環境にあるものを利用して生活するアウトドアスタイルのことです。「Bush(茂み)」と「Craft(工作)」を組み合わせた「生活の知恵」を意味する言葉であり、必要最低限の装備でのアウトドアを楽しむことを指します。
ブッシュクラフトを趣味にしている人のことを、「ブッシュクラフター」と呼ぶこともあります。

便利なアウトドアグッズを持ち込まないことで過酷かつ不便な状況下でのキャンプを楽しむことが、ブッシュクラフトの醍醐味です。便利な道具を持ち込まないことから、通常のキャンプよりも難度が高いと考えられるでしょう。
本格的なブッシュクラフターの場合、タープとナイフだけでキャンプに臨むこともあります。自然を利用して自然の中で過ごすことから、究極のアウトドアと言っても過言ではありません。
「野営」「サバイバル」との違い

ブッシュクラフトについて説明すると、「野営」や「サバイバル」と混同してしまう方もいます。しかしこれらの3つの言葉は、それぞれ以下を意味する別の言葉です。
【それぞれの意味】
- ブッシュクラフト:できるだけ自然にあるものを利用して過ごすこと
- 野営:キャンプ場以外の場所でキャンプをすること
- サバイバル:過酷な状況下で生き残ること
野営は、キャンプ場以外の管理されていない場所でキャンプすることに焦点を当てた言葉です。ブッシュクラフトは自然を生かした「過ごし方」について注目した概念であり、キャンプをする場所に決まりはありません。
サバイバルは過酷な状況下での「生き残り」に焦点を当てた言葉であり、「自然を感じながらの生活」にこだわるブッシュクラフトとは別の言葉です。ブッシュクラフトを楽しむにあたっては、安全性を第一に考えることが重要と言えるでしょう。
ブッシュクラフトの楽しみ方

ここでは、ブッシュクラフトの楽しみ方について、3つのアイデアを紹介します。
焚火

ブッシュクラフトの楽しみ方としてまず挙げられるのが、焚火です。一般的なキャンプにおけるたき火では、炭や着火剤を持ってきてなるべく火が付きやすくします。火をおこすこと自体が目的ではなく、火を使って料理をしたりキャンプファイヤーをしたりすることが目的であることが多いためです。
しかしブッシュクラフトでは、炭や着火剤は使用しません。薪や小枝を自分で現地調達し、イチから火起こしをするのです。火種には、乾燥した枯草やすすきの穂などを使用します。
また、細い薪をナイフで細かく裂き、「フェザースティック」と呼ばれる状態にして火種にすることもあります。さらにマッチやバーナーなども使用せず、木の棒をすり合わせたりファイヤースターターを使用したりして着火させるのが基本です。
自分で一から火起こしをしていると、「火を起こすことはこんなに難しいことだったのか」と気づかされるでしょう。それだけに、試行錯誤の末に火が付いたときの感動は言葉にできません。
料理

ブッシュクラフトの楽しみ方としては、料理も挙げられます。本格的なブッシュクラフトを行うなら、食料自体も現地で用意することが理想です。魚やキノコ、食べられる野草などを調べ、現地調達して料理をすると、本格的なブッシュクラフトの料理を楽しめるでしょう。
しかし、食料の現地調達は非常にレベルが高いものだと言えます。野草やキノコなど現地調達できるものには、食料に適さないものや毒をもつものもあるためです。
そのため初めてブッシュクラフトをするのであれば、食材はスーパーで買いそろえることをおすすめします。自分で火を起こして直火で調理をするだけでも、十分にブッシュクラフトを楽しめます。さらに、お箸や皿、スプーンなどを手作りすることも、ブッシュクラフトならではの楽しみ方でしょう。
テント設営

ブッシュクラフトを突き詰めていくのであれば、テント設営もできるだけ自然の物を使って行うことをおすすめします。一般的なテントグッズについているポールや幕帯は使用せず、タープと現地で手に入る木や枝、落ち葉などを使ってシェルターを作ります。
どのように設営すれば安定して雨風をしのげるのか、試行錯誤すること自体にブッシュクラフトの醍醐味を感じられるでしょう。また、上級者の場合はタープではなく。防水布やその他の布を縫い合わせて使用する方もいます。
ただしテント設営は難度が高いことから、事前にやり方を誰かに習うか、経験者と一緒に行うのがおすすめです。近年では動画にて設営方法を説明している人もいるため、参考にしてみると良いでしょう。
自給自足ならではの達成感を得よう!

ブッシュクラフトを突き詰めている人のなかには、キャンプで使用するあらゆるものを現地で自作する人もいます。
【自作できる主な物の例】
- フォーク
- スプーン
- テーブル
- イス
上記のような道具を自分で用意できるようになることで、ブッシュクラフトの楽しみが少しずつ高まっていくでしょう。また、現地で食料を調達できるようになると、ブッシュクラフターとしてもレベルが当たってきたと考えられます。
無理をする必要はないため、少しずつ自分でできることを増やしていき、アウトドアの醍醐味を思い切り満喫しましょう。ただし、いずれの活動にも一定の危険が伴うため、「ここだけは絶対に守る」とのルールをしっかりと決めて取り組むことが重要です。
ブッシュクラフトの注意点

ここでは、ブッシュクラフトを楽しむために守るべき注意点について解説します。
安全第一に
ブッシュクラフトを楽しむうえでまず守るべきこととして、安全を第一にすることが挙げられます。ブッシュクラフトではできるだけ自然の物を利用しようとしますが、無理をすると危険につながることもあるため注意が必要です。
たとえば、食材の調達を現地で行おうとすると、毒性を持つ危険な食べ物をしっかりと選別しなくてはいけません。野草やキノコなどに関する知識が十分にない状態であれば、現地調達を無理に行うことは避けるべきです。
また、自然に自ら飛び込んでいくため、自然に対する危機管理も決して忘れてはいけません。土砂崩れや川の氾濫、そして落石など、自然災害への対策はしっかりと行っておく必要があります。
さらに野生動物に遭遇する可能性もあるため、季節や場所を十分に考慮して安全を確保することが求められます。
ブッシュクラフトは、サバイバルではありません。アウトドアアクティビティとして楽しむためには、自分の安全を確保することを優先しましょう。
法律・ルールを守る
ブッシュクラフトを楽しむ前提としては、法律やルールをきちんと守ることも大切です。まず、キャンプをする場所には細心の注意が必要です。「自然に飛び込みたい」と野営場所を選ぶと、誰かの私有地に無断で入り込むことになりかねません。
また、食料を現地調達しようと誰かの私有地で野草やキノコを採ってしまったり、釣り禁止区域で魚を釣ったりすることも避けるべきです。もし野営が禁止されていたとしても、地面の上で直接たき火を行う「直火」に関しては、自然保護の観点から禁止されていることが多くあります。直火をしてよい場所かどうか、事前に確認することが求められるでしょう。
さらに事前に確認しておくべきこととしては、各自治体のルールも挙げられます。自治体によっては、特定の区域におけるキャンプを禁止していることがあるため注意してください。アウトドアアクティビティを楽しむうえでは、ルールを守ることが非常に大切です。
良さそうな場所を見つけたとしてもそのまま勝手に野営を始めてしまうのではなく、その地域でのルールをまず確認することをおすすめします。
初心者ならある程度のアイテムは持っていく
いくら「自然の物を使って生活する」と言っても、必要最低限のアイテムは持っていくことが重要。基本的に以下のアイテムは、初心者かどうかを問わず持っていきましょう。
【ブッシュクラフトの基本装備】
- ナイフ
- ファイヤースターター
- 水筒
上記の3アイテムがあれば、火おこしや道具作りなどの活動がある程度可能です。ナイフ1つあれば、木を削って何かを作ったり火おこしに使ったりと、行動範囲が広がります。
また、火おこしの際にはファイヤースターターが重宝するでしょう。そして生活するうえで水の確保は欠かせないため、水筒も必需品に挙げられます。
さらに状況に合わせて、以下のアイテムも持っていくことを検討してください。
【おすすめのアイテム】
- タープ・テント
- 焚火台
- バックパック
- 調理器具
- ロープ
- 救急セット
- ポータブル浄水器
あくまでも無理をしないことが大切であることから、普段のキャンプから徐々に自分でできることを増やしていく程度の感覚で初めてみても良いでしょう。
まとめ

ブッシュクラフトとは、森林や原野などにおいて、できるかぎり自然環境にあるものを利用して生活するアウトドアスタイルのことです。積極的に自然の中に入って活動するのは、アウトドアの醍醐味でもあります。ブッシュクラフトでは、たき火や料理、テント設営など、さまざまなことを楽しむことが可能です。
安全面の管理やルールの順守などには十分に注意して、しっかりとした準備のうえでブッシュクラフトを楽しみましょう。